misuzu kaneko金子みすゞ

今週の詩

もくせいの灯
                  金子みすゞ
お部屋にあかい灯(ひ)がつくと、
硝子(がらす)のそとの、もくせいの、
しげみのなかにも灯がつくの、
ここのとおんなじ灯がつくの。

夜更(ふ)けてみんながねねしたら、
葉っぱはあの灯をなかにして、
みんなで笑って話すのよ、
みんなでお唄(うた)もうたうのよ。

ちょうど、こうしてわたしらが、
ごはんのあとでするように。

窓(まど)かけしめよ、やすみましょ、
みんなが起きているうちは、
葉っぱはお話できぬから。
ちひろのコメント
金木犀のお花を‘あかい灯’と詠う、みすゞさんの作る物語が本当に素敵です。なんてかわいい世界でしょう。夜、人間が眠ったあとに、みんなで楽しい時間を過ごす金木犀。そのために、私たちはちゃんとおやすみしましょうと。この詩を読み終えたあと、自分の心にやさしい灯がともるようで、なんともうれしい気持ちになります。
2026/10/05の詩

幻灯(げんとう)
                  金子みすゞ
あれはいつかの
夢(ゆめ)かしら。

夜ふけてうつす
幻灯の、
淡(あわ)く、ふしぎな、
なつかしい、
うす青いろの
絵のなかに、
ふとみえて、
ふと消えた、
誰(だれ)かによく似(に)た、
やさしい瞳(め)。

あれは、あの夜の
夢かしら。
ちひろのコメント
今は聞きなれない「幻灯」。映画が普及する前の時代に、絵や写真の画像をレンズをとおして映し出す機械。それで見たやさしい眼の人物・・・。私はみすゞさんが、詩に描く、この「誰か」は、やっぱり、みすゞさんが3歳になる直前に亡くなったお父さんのことを想ってしまいます。きっと会いたかっただろう、お父さん。夢の中では会えていたら、嬉しいな・・・。そして、今ごろはきっと、空の向こうで・・・。
2026/09/28の詩

お月さんとねえや
                  金子みすゞ
私(わたし)があるくとお月さんもあるく、
いいお月さん。

毎晩(まいばん)忘(わす)れずに
お空へくるなら
もっともっといいお月さん。

私が笑うとねえやも笑う、
いいねえや。

いつでも御用(ごよう)がなくて
あそんでくれるなら
もっともっといいねえや。
ちひろのコメント
小さい頃、特にお月さんが自分に付いてくるような感覚が嬉しいものでした。お月さんも、‘ねえや’も、いつも自分と一緒にいてくれたら、とってもいいのになって素直な可愛い気持ちが、お月さまに映るように感じます。皆さんは、お月さまに、どんな想いを馳せているでしょう。今年の中秋の名月は、9月25日、満月は27日だそうです。素敵な夜になりますように。
2026/09/21の詩

おどり人形
                  金子みすゞ
おどり人形は、箱の上、
きょうもちりから、くるくると。

前にゃ夜店の瓦斯(ガス)の灯(ひ)に、
欲(ほ)しそな顔が七つ八つ。

くるり廻(まわ)れば暗い海、
お船の灯(あかり)がちらちらと。

おどり人形は、越(こ)えて来た、
とおい海路をおもい出し、

眼(め)にはなみだは湧(わ)いてても、
足はやすまず、くるくると。

またもまわれば、瓦斯(ガス)の灯(ひ)に、
更(ふ)けて浴衣(ゆかた)の子がふたり。

ちひろのコメント
外国から輸入された「おどり人形」なのでしょう。きっとほとんどの人はその可愛さや珍しさに心奪われる。でも、みすゞさんは人形の気持ちになって見つめている。くるくる踊りながらも心の中では泣いていると。それも知らず町の中を行く浴衣の子たちです。人知れず、いろんな想いがお祭りの夜に溶けています。
2026/09/14の詩

神輿(みこし)
                  金子みすゞ
あかい提灯(ちょうちん)
まだ灯がつかぬ
秋のまつりの
日ぐれがた。

あそびつかれて
お家へもどりゃ、
お父さんは
お客さま、
お母さんは
いそがしい。

ふっとさびしい
日ぐれがた、
裏(うら)の通りを
嵐(あらし)のように
神輿(みこし)のゆくのを
ききました。
ちひろのコメント
金子みすゞさんの512編には、お祭りを詠った詩もたくさんあります。詩をとおして、仙崎の、長門のいろんなお祭りを想像すると、いかにみすゞさんが故郷のいろんな文化が大好きだったか、よく伝わってきます。そして、今もその伝統あるお祭りが開催されている仙崎が、また嬉しくなります。みすゞさんの詩は、昔と今を繋いでくれる、素敵なタイムマシンです♪
2026/09/07の詩

「金子みすゞ童謡全集」(JULA出版局)より

JULA出版局

金子みすゞの詩、写真は、金子みすゞ著作保存会の了承を得て掲載しています。
転載される場合は、必ず「金子みすゞ著作保存会」の許可を得てください。
連絡先:〒112-0001 東京都文京区白山3-4-15 内田ハウス1F JULA出版局内
TEL:03-3818-0791 FAX:03-3818-0796

金子みすゞプロフィール

金子みすゞ

 『赤い鳥』、『金の船』、『童話』などの童話童謡雑誌が次々と創刊され、隆盛を極めていた大正時代末期。そのなかで彗星のごとく現れ、ひときわ光を放っていたのが童謡詩人・金子みすゞです。
 金子みすゞ(本名テル)は、明治36年大津郡仙崎村(現在の長門市仙崎)に生まれました。成績は優秀、おとなしく、読書が好きでだれにでも優しい人であったといいます。

 そんな彼女が童謡を書き始めたのは、20歳の頃からでした。4つの雑誌に投稿した作品が、そのすべてに掲載されるという鮮烈なデビューを飾ったみすゞは、『童話』の選者であった西條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」と賞賛されるなど、めざましい活躍をみせていきました。
 ところが、その生涯は決して明るいものではありませんでした。23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩作を禁じられてしまい、さらには病気、 離婚と苦しみが続きました。ついには、前夫から最愛の娘を奪われないために自死の道を選び、26歳という若さでこの世を去ってしまいます。こうして彼女の 残した作品は散逸し、いつしか幻の童謡詩人と語り継がれるばかりとなってしまうのです。

 それから50余年。長い年月埋もれていたみすゞの作品は、児童文学者の矢崎節夫氏(現金子みすゞ記念館館長)の執念ともいえる熱意により再び世に送り出され、今では小学校「国語」全社の教科書に掲載されるようになりました。
 天才童謡詩人、金子みすゞ。自然の風景をやさしく見つめ、優しさにつらぬかれた彼女の作品の数々は、21世紀を生きる私たちに大切なメッセージを伝え続けています。

(金子みすゞ記念館ホームページより)

金子みすゞ記念館

みすゞさんとの出会い

2003年(平成15年)1月21日、私は東京から山口へ帰郷しました。
作曲家活動の中で、自分の音楽の方向性を見失い、もう一度自分を見つめなおそうと思ってのことでした。
偶然にもその年は、みすゞさん生誕100年の年でした。
私が12歳の時に、父が買っていた1冊の詩集「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ童謡詩集)を初めて手にとり、ページをめくりました。

ズキンズキンと心臓が鳴るのがわかりました。
「これだ…ここに私が歌いたい心がある…」

みすゞさんは、命あるものなきもの、見えるもの見えないもの、
全ての存在へ優しく深い眼差しを向けている…。
その世界の中で私たちは、尊い命を与えられて生きている。
命、絆、ご縁、全てのつながりに感謝をし、今を自分らしく生きて行く。
そのためのメッセージが、やわらかく、眩しく、描かれている。

「この詩に曲をつけて歌いたい」
この出合いの瞬間から、私は再び音楽の道を歩み始めました。

みすゞさんが伝えてくれる大切な心を、
ずっとずっと、歌い語っていきたい。

こだまし合う、一人として。

ちひろ

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