misuzu kaneko金子みすゞ

今週の詩

すねた時
                  金子みすゞ
とうからここですねてるに、
誰(だれ)も探(さが)してくれないの。

なぜだか知らない、すねてるに、
誰もみつけてくれないの。

活動写真の楽隊の、
とおくなるのを聞いてたら、
なんだか泣きたくなちゃった。
ちひろのコメント
この気持ちって、みんな経験したことがあるかもしれませんね。ちょっと嫌なことがあって、気分が優れなくて、ちょっと拗ねている。でも、結局そのくらいのちょっとしたことなので、誰も相手にしてくれません(笑)。泣きたくなっちゃう気持ち、自分しか分からない気持ち。みすゞさんにも、こうしたことってあったのでしょうか。あってほしいな、自分と同じようなちょっと情けない部分もあってほしいな、なんて思ってしまいます。
2026/02/02の詩

星とたんぽぽ
                  金子みすゞ
青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈(しず)んでる、
昼のお星は眼(め)にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。

散ってすがれたたんぽぽの、
瓦(かわら)のすきに、だァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根は眼にみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
ちひろのコメント
子どもたちにもわかりやすい例えで、人としての大切なまなざしを伝えてくれる詩です。見えない中に大切なものが隠れている。今生きているその命の輝き、そして命の繋がりも、見えないけれどずっと前から、受け継がれてきたものです。私の内に眠る、抱いている思いも、夢も、未来も。大切なものは目に見えない、だからこそ大切に思いたい。あなたの中の大切なもの、今年もしっかり見つめてあげてください。
2026/01/26の詩

大将
                  金子みすゞ
僕(ぼく)が大将になったとき、
横町のいじめっ子が失敬(しっけい)したら、
空(そら)見(み)て、かっぽ、かっぽ、
お馬を飛(と)ばそ。

僕が大将になったとき、
田圃(たんぼ)の案山子(かかし)が失敬(しっけい)したら、
ていねいに失敬かえしてやろう。

僕が大将になった時、
お父さんがやって来て失敬したら、
僕のお馬に乗っけてあげよう。
ちひろのコメント
お馬に乗った大将の自分に、失敬した相手によって、それぞれ違うリアクション。いじめっ子には悔しさを空に飛ばしています。おとなしい案山子には仕返ししています。そしてお父さんには・・・一緒に過ごしたい思い、お父さんには特別待遇です(笑)。みすゞさんは3歳になる直前にお父さんを亡くしているので、やっぱりお父さんへの想いは特別なものがありますね。今年は午年。皆さんはどんな思いで空を駆けますか?
2026/01/19の詩

かるた
                  金子みすゞ
お炬燵(こた)の上に、
お蜜柑(みかん)積んで、
お祖母様(ばあさま)、眼鏡(めがね)、
キラ、キラ、キラリよ。

畳(たたみ)のうえにゃ、
かるたが散って、
ちいちゃいお頭(つむ)、
ひい、ふう、みいつよ。

硝子(がらす)のそとは、
しずかな暗夜(やみよ)、
ときどき霰(あられ)が、
パラ、パラ、パラリよ。
ちひろのコメント
お正月は家族でかるた遊びをされたお家もあったことでしょう。この詩は、とてもリズムが軽快で、みすゞさんの音遊びも感じられます。日常生活の中に、こうした軽やかなリズムがあること、とても素敵だなと思います。心がちょっと落ち込む時にこそ、音が、リズムが、音楽が自分の心を持ち上げてくれます。私にとって、みすゞさんの詩も、音楽のように楽しめる世界。今年もいっぱい楽しみたいと思います。
2026/01/12の詩

月日貝
                  金子みすゞ
西のお空は
あかね色、
あかいお日さま
海のなか。

東のお空
真珠(しんじゅ)いろ、
まるい、黄色い
お月さま。

日ぐれに落ちた
お日さまと、
夜あけに沈(しず)む
お月さま、
逢(お)うたは深い
海の底。

ある日
漁夫(りょうし)にひろわれた、
赤とうす黄の
月日貝。
ちひろのコメント
明けましておめでとうございます。どんなお正月をお過ごしでしょうか。おせち料理、お雑煮、いろんな楽しい時間をご家族で味わっておられる方も多いことでしょう。月日貝、今ではほとんど獲られなくなった貝ですが、私たちがいただく食材にも、いろんな一日一日があること。今年も、美味しい食事をいただけることに感謝して、素敵な一年を過ごしてまいりましょう。
2026/01/05の詩

「金子みすゞ童謡全集」(JULA出版局)より

JULA出版局

金子みすゞの詩、写真は、金子みすゞ著作保存会の了承を得て掲載しています。
転載される場合は、必ず「金子みすゞ著作保存会」の許可を得てください。
連絡先:〒112-0001 東京都文京区白山3-4-15 内田ハウス1F JULA出版局内
TEL:03-3818-0791 FAX:03-3818-0796

金子みすゞプロフィール

金子みすゞ

 『赤い鳥』、『金の船』、『童話』などの童話童謡雑誌が次々と創刊され、隆盛を極めていた大正時代末期。そのなかで彗星のごとく現れ、ひときわ光を放っていたのが童謡詩人・金子みすゞです。
 金子みすゞ(本名テル)は、明治36年大津郡仙崎村(現在の長門市仙崎)に生まれました。成績は優秀、おとなしく、読書が好きでだれにでも優しい人であったといいます。

 そんな彼女が童謡を書き始めたのは、20歳の頃からでした。4つの雑誌に投稿した作品が、そのすべてに掲載されるという鮮烈なデビューを飾ったみすゞは、『童話』の選者であった西條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」と賞賛されるなど、めざましい活躍をみせていきました。
 ところが、その生涯は決して明るいものではありませんでした。23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩作を禁じられてしまい、さらには病気、 離婚と苦しみが続きました。ついには、前夫から最愛の娘を奪われないために自死の道を選び、26歳という若さでこの世を去ってしまいます。こうして彼女の 残した作品は散逸し、いつしか幻の童謡詩人と語り継がれるばかりとなってしまうのです。

 それから50余年。長い年月埋もれていたみすゞの作品は、児童文学者の矢崎節夫氏(現金子みすゞ記念館館長)の執念ともいえる熱意により再び世に送り出され、今では小学校「国語」全社の教科書に掲載されるようになりました。
 天才童謡詩人、金子みすゞ。自然の風景をやさしく見つめ、優しさにつらぬかれた彼女の作品の数々は、21世紀を生きる私たちに大切なメッセージを伝え続けています。

(金子みすゞ記念館ホームページより)

金子みすゞ記念館

みすゞさんとの出会い

2003年(平成15年)1月21日、私は東京から山口へ帰郷しました。
作曲家活動の中で、自分の音楽の方向性を見失い、もう一度自分を見つめなおそうと思ってのことでした。
偶然にもその年は、みすゞさん生誕100年の年でした。
私が12歳の時に、父が買っていた1冊の詩集「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ童謡詩集)を初めて手にとり、ページをめくりました。

ズキンズキンと心臓が鳴るのがわかりました。
「これだ…ここに私が歌いたい心がある…」

みすゞさんは、命あるものなきもの、見えるもの見えないもの、
全ての存在へ優しく深い眼差しを向けている…。
その世界の中で私たちは、尊い命を与えられて生きている。
命、絆、ご縁、全てのつながりに感謝をし、今を自分らしく生きて行く。
そのためのメッセージが、やわらかく、眩しく、描かれている。

「この詩に曲をつけて歌いたい」
この出合いの瞬間から、私は再び音楽の道を歩み始めました。

みすゞさんが伝えてくれる大切な心を、
ずっとずっと、歌い語っていきたい。

こだまし合う、一人として。

ちひろ

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