今週の詩

ちひろのコメント
喧嘩をしたあと、相手もわたしも大好きなげんげ(れんげ)の花を摘んで、嬉しく楽しい気持ちを、仲良しな相手とついつい共感し合った、こだましたんですね。ピイチク啼いているひばりもきっと、その光景を微笑ましく見ていたんでしょう。春が、仲なおりしたふたりを、優しく包んでいます。仲なおり
金子みすゞげんげのあぜみち、春がすみ、
むこうにあの子が立っていた。
あの子はげんげを持っていた、
私(わたし)もげんげを摘(つ)んでいた。
あの子が笑う、と、気がつけば、
私も知らずに笑ってた。
げんげのあぜみち、春がすみ、
ピイチク雲雀(ひばり)が啼(な)いていた。
象
金子みすゞおおきな象にのりたいな、
印度(インド)のくにへゆきたいな。
それがあんまり遠いなら、
せめてちいさくなりたいな。
おもちゃの象に乗りたいな。
葉の花ばたけ、麦ばたけ、
どんなに深い森だろう。
そこで狩(か)り出すけだものは、
象より大きなむぐらもち。
暮(く)れりゃ雲雀(ひばり)に宿借りて、
七日七夜を森のなか。
えものの山を曳(ひ)きながら、
深い森から出たときに、
げんげ並木(なみき)の中みちは、
そこから仰(あお)ぐ大空は、
どんなにどんなにきれいだろ。
ちひろのコメント
金子みすゞさんの一人娘・上村ふさえさんが大好きだった詩です。ふさえさんがまだ幼い当時、お母さん(みすゞさん)へ話したふさえさんの言葉が「南京玉」に綴られていますが、その中にも象の話が出てきます。記憶のないお母さんとの繋がりを感じる詩。みすゞさんにとっても、ふさえさんにとっても、宝物です。「金子みすゞ童謡全集」(JULA出版局)より
金子みすゞの詩、写真は、金子みすゞ著作保存会の了承を得て掲載しています。
転載される場合は、必ず「金子みすゞ著作保存会」の許可を得てください。
連絡先:〒113-0021 東京都文京区本駒込6-14-9 株式会社フレーベル館内
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金子みすゞプロフィール
『赤い鳥』、『金の船』、『童話』などの童話童謡雑誌が次々と創刊され、隆盛を極めていた大正時代末期。そのなかで彗星のごとく現れ、ひときわ光を放っていたのが童謡詩人・金子みすゞです。
金子みすゞ(本名テル)は、明治36年大津郡仙崎村(現在の長門市仙崎)に生まれました。成績は優秀、おとなしく、読書が好きでだれにでも優しい人であったといいます。
そんな彼女が童謡を書き始めたのは、20歳の頃からでした。4つの雑誌に投稿した作品が、そのすべてに掲載されるという鮮烈なデビューを飾ったみすゞは、『童話』の選者であった西條八十に「若き童謡詩人の中の巨星」と賞賛されるなど、めざましい活躍をみせていきました。
ところが、その生涯は決して明るいものではありませんでした。23歳で結婚したものの、文学に理解のない夫から詩作を禁じられてしまい、さらには病気、 離婚と苦しみが続きました。ついには、前夫から最愛の娘を奪われないために自死の道を選び、26歳という若さでこの世を去ってしまいます。こうして彼女の 残した作品は散逸し、いつしか幻の童謡詩人と語り継がれるばかりとなってしまうのです。
それから50余年。長い年月埋もれていたみすゞの作品は、児童文学者の矢崎節夫氏(現金子みすゞ記念館館長)の執念ともいえる熱意により再び世に送り出され、今では小学校「国語」全社の教科書に掲載されるようになりました。
天才童謡詩人、金子みすゞ。自然の風景をやさしく見つめ、優しさにつらぬかれた彼女の作品の数々は、21世紀を生きる私たちに大切なメッセージを伝え続けています。
(金子みすゞ記念館ホームページより)
みすゞさんとの出会い
2003年(平成15年)1月21日、私は東京から山口へ帰郷しました。
作曲家活動の中で、自分の音楽の方向性を見失い、もう一度自分を見つめなおそうと思ってのことでした。
偶然にもその年は、みすゞさん生誕100年の年でした。
私が12歳の時に、父が買っていた1冊の詩集「わたしと小鳥とすずと」(金子みすゞ童謡詩集)を初めて手にとり、ページをめくりました。
ズキンズキンと心臓が鳴るのがわかりました。
「これだ…ここに私が歌いたい心がある…」
みすゞさんは、命あるものなきもの、見えるもの見えないもの、
全ての存在へ優しく深い眼差しを向けている…。
その世界の中で私たちは、尊い命を与えられて生きている。
命、絆、ご縁、全てのつながりに感謝をし、今を自分らしく生きて行く。
そのためのメッセージが、やわらかく、眩しく、描かれている。
「この詩に曲をつけて歌いたい」
この出合いの瞬間から、私は再び音楽の道を歩み始めました。
みすゞさんが伝えてくれる大切な心を、
ずっとずっと、歌い語っていきたい。
こだまし合う、一人として。
ちひろ
ちひろのコメント
喧嘩をしたあと、相手もわたしも大好きなげんげ(れんげ)の花を摘んで、嬉しく楽しい気持ちを、仲良しな相手とついつい共感し合った、こだましたんですね。ピイチク啼いているひばりもきっと、その光景を微笑ましく見ていたんでしょう。春が、仲なおりしたふたりを、優しく包んでいます。